第2期医薬安全性研究会

Japanese Society for Biopharmaceutical Statistics - Since 1979 (1st 1979~2007, 2nd 2007~)

4月のつれづれ草

今年の桜は長く咲いていた。それは4月の天候のせいだったのか。気温も雲の動きも、風も雨も、陽の光も目まぐるしく変化したのは確かである。私の仕事も4月は、天候のように目まぐるしく推移した。この淡路町だよりもゆっくり書いている時間がなかった。しかし、ちょっとしたことで書き留めておきたいことには日々出会う。そこで、4月が終わるにあたり、あれこれの出来事を日記風につづって、振り返ってみよう。


[4月4日]

昼に、私は小田急線の玉川学園駅に降り立った。最高の陽気で、駅前の桜並木は満開のままであった。私は都立北園高校の1、2年生のときに同じクラスだった渡部佳延氏と待ち合わせたのである。講談社の学術文庫出版部部長まで務めたのだが、きっぱり退職し、今はサルトルの研究に集中している。増田屋が有名な蕎麦屋だというので、少し歩いて入った。天南蛮そばを食う。ぐんぐん気温が上がるので、汗ばんでくる。

ところで、我々はどこへ行こうというのか?昭和薬科大学へ、向かおうというのだ。駅から5分も歩かないうちに、非常に急な坂道を登る。すると、山の尾根のような道が続き、緑多く左右に住宅が点在する不思議な空間を歩く。この辺りはもと山の中で、丁度、我々が歩いている道はまさにその尾根になっているのだった。左右を見ると、なだらかなスロープに沿って住宅が並んでいるのが分かる。昭和薬科大学は山の中にあったのである。

私たちは何しに昭和薬科大へ行くのか。旧知の松林先生のお誘いに乗り、渡部はこの4月から、私は10月から非常勤講師として勤めるための打ち合わせである。山道を歩くこと15分弱。1本だけの校舎が長く伸びた、小ぢんまりした大学であった。山の木々があちこちに残されていて、桜と言わず、桃も咲き誇り、うっとりするような風景。いいところだ。

私たちは、松林先生に、校舎の長い廊下を歩きながら、教室や事務室を案内してもらっていた。

その時である。すれ違う学生がことごとく、私たちに挨拶をしてくれるのである。多分、松林先生になのだろうが、びっくりした。私も色々な大学を訪問するが、こんな経験は初めてである。先生に聞いてみると、昔からの伝統で、下級生に受け継がれていくらしい、とのこと。いや、いいものを見せてもらった。秋からの数学講義の授業を頑張らなくちゃあ、と思った次第である。


[4月10日]

どうしてあんなことが起きたのか、私は今以て分からない。時間にして、30秒~1分間のことだったからだ。

その日は1日寒く、雨も昼に降っていた。私は昼食後、高塚君と青山学院大学へ行ったのである。小田急線町田駅から、JRに乗り換えて二つ目、淵野辺に、しゃれた建物群の青学がある。小社で2004年に刊行した『今知りたいライフサイエンス』の増刷の打ち合わせに著者の降旗先生を訪ねたのである。事件はそこで起きたのではない。

小雨が降り続き、傘もしっとりと濡れて、我々は元きた経路をたどって帰途につき、小田急線の新宿駅に着いた。私はJRの切符を買うために、小田急線の清算窓口へと向かった。事件はそこで起きた!私は、いつものバッグを小脇に抱えているだけではなく、同時に傘も持っていた。折りたたみ式なので、左手はバッグと傘でふさがっていたのだ。そして、最近の習慣として、切符は定期入れに差し込んでいたのである。何しろ、Gパンのポケットに穴があいていて、一、二度切符を落としたことがあるので、以来、定期入れに差し込んでいるという訳だ。

私は、右手1本で定期入れをポケットから出し、さらに御茶ノ水駅までの切符を買うために小銭入れも出した。切符と、定期入れと、小銭が交錯した。そのとき、まだ私の清算が終わっていないのに、小柄なオヤジが「○○○駅まで」と割り込んできたのである。一瞬、私は混乱し、動作が乱れたのを感じた。しかし、JRの切符を購入し、私は高塚君の待つすぐ前のJR改札口へと向かった。改札を通り過ぎてすぐ、

「定期入れはポケットに入れたよな?」

果して、入っていなかった。

「落としたか、窓口の棚の上に置き忘れたか?」

私はすぐに引き返して、改札窓口のあたりを見、今、切符を買った小田急線の駅員にも聞いてみたのだが定期入れはなかった!ほんの1分と経っていないのに!

さがす、といっても、その間の行動半径は極く限られているから、どうなったのかさっぱり分からない。取り敢えず職員に聞いて、小田急線の落し物受付のある場所(駅までもどる)へいき、事情を話したのだが、「届けはないですね」と、まことに素気ない返事だった(小田急線の職員の、何とぶっきらぼうなことよ。一時代前の、悪しき役人のようであった)。

「買ったばかりの3ヶ月の定期なのに、どうしてくれよう」とブツブツと思い悩みながら、社に引き返した。新しく定期を買い換える案もチラッと頭をかすめたが、見つかれば椎名町駅から連絡が入るということなので、2、3日は様子を見ることにした。

翌日の夜、会社に一本の電話が入る。私の定期入れ(定期券と名刺が入っている)を拾ったという。「あの改札窓口付近になかったのか。ではどこにあったのだろう?」私は混乱していたが、拾い主の仕事の関係で次の日の夜、天王洲アイルへ行き、無事取り戻すことができたのであった。何でも駅のトイレに落ちていたらしい。察するに、私が落とした瞬間、誰かが持ち去ったのではないかと思う。そして定期入れを物色したが金目のものがなかった(ほとんど使い尽くしたSFカードは数枚入っていたが)。そこで、トイレに捨てたらしい。実際、なくなっているものはなかった。

なお、Gパンはその後、買い換えたので、今は穴はあいていない。


[4月25日]

朝7時頃、目が覚めかけて、私は寝床の中で、何気なく足を伸ばした。すると突然、片足の筋肉が引きつったようになり、ふくらはぎの下辺りが猛烈に痛くなったのだ!こんなことは今までになかった。筋肉が3~4分、きつく固まってしまった感じ。このまま、どうなることかと思ったのだが、幸い、数分して筋肉がほぐれてきて、元に戻った。出社する頃には、ほぼ正常になったので、いつも通り家を出る。

しかし、翌日の朝も同じことが起きた。ん?変だな?(痛いし)

どうしようもないので、トクホンを足の後側に貼ることにした。スーッと薬剤が皮膚に浸透して、効くような気がしてきた。トクホンは毎日張り替えた。あの痛みはごめんだからである。

ところが、22日頃、しっかりとトクホンの貼られた足を、早朝の寝床の中で何気なく伸ばしたら、再び足に激痛が襲ってきた。筋肉が硬直し、動けない。3~4分のことなのだが、耐えられない。トクホンは効かなかったのだ!

原因は何だったのだろう?私は歩きながら考えた。最近、私が足に負担をかけたことがあったか?実はあった。私の靴は、底のゴムがすり減ってぺしゃんこになっているので、中敷き(インソール)を2枚敷いていたのだが、3月に、もう一枚厚さ2mmほどの白いスポンジ状の中敷きを3枚目として入れたのである。靴が地面よりも高い位置にある感覚になり、いい履き心地だったのだ。しかし、この中敷きが怪しい。そう直感して、4月25日に、はずして、もとのぺしゃんこ靴にしてみた。1回、筋肉痛が襲ってきはしたが、概ね良好である。

4月の発見、であろうか。