日々の活動のなかから、「おやっ」とか「あれっ」という話題を拾って紹介するこのコーナーであるが、この2ヶ月、W杯の影響もあり、気ぜわしく過ぎてしまった。そこで、今回はこの間の活動のいくつかを日誌風に書き止めておきたいと思う。
1月に小社より刊行した標記書の発行を祝っての出版記念会を5月21日(火)に開催した。
本書は1月に発刊され、幸い好評を博し、初版1000部のあとすぐにもう1000部増刷になり、『食の科学』、『畜産の研究』、『男の食彩』、『學鐙』、『ヴィノテーク』、『専門料理』などに紹介されたこともあって、順調に売れている。
そんな勢いもあり、雪印食品の事件はあったものの、やはり本書の出版を祝おう、ということになったのである。場所は京橋明治屋ビルの地下1階にあるスナックモルチェの一角。参加者は泉さんとその御家族、雪印乳業の関係者を含めて34名と盛会であった。養賢堂の『畜産の科学』の編集長も駆けつけてくれ、いろいろとお話しを伺うことができた。
私にとって何より印象的だったのは、初めてお会いした昨年9月以来、泉さんの顔色に生気が増し、楽しそうになられたことである。1冊の本を出すということの功徳を実感した次第である。
当日の泉さんは、スタイリストでユーモリストの面目を大いに発揮して、著書へのサイン攻めや、出版をめぐる話題で引っ張りダコであった。
小社では、数年前から、数理科学を実務に応用するための方法や、そのための数理科学の力量を身に付けることを目的として、応用数理研究会という集まりを持ってきた。
具体的には、『統計モデル入門』(田中豊・森川敏彦・栗原孝次訳、共立出版、1993)を徹底的に輪読し、演習問題もすべて解いてきたのだが、月1回の研究会で34回かかったのだが、読み切ったのである。
そこで、これを記念して訳者の一人である武田薬品の森川さんに来て頂いて講演をお願いしたという次第だ。
実は、森川さんにはかなり前から講演依頼をしていたのだが、輪読は遅々として進まず、いつの間にか34回になってしまったのだ。
当日の参加者は25名余。総評会館403号室にて行われた。
テーマは、「臨床統計と私の歩み」および「対応のある2値データに対する同等性検定における最近の発展」の二本立てである。前者は、タイトル通り森川さんの歩みと日本の臨床統計の発展をダブらせて、興味深い歴史が豊富な人脈とともに語られ、大好評だった。
二本目は、森川さんの専門研究について研究の競争の現場の臨場感を伴いつつ、ていねいに語って頂いた。小さな会の私的な集まりにも拘らず、よく準備された資料を揃えて下さり、非常に楽しい一時であった。
なお、36回以降は『多変量解析の理論』(伊藤孝一、培風館)の輪読を始めたところである。
31日の夜10時頃、日本オルガノンのある大阪の都島駅にたどり着いた。鐘紡の影響力の強い土地とはあとで知ったのだが、BELLFA1階の呑み屋がんこに、谷本学校(安全性評価研究会)の面々が揃っていて、すでに宴は終りに近づいていた。2002年春のセミナーの前の日、W杯初日、フランスが敗れた日でもある。
この日に合わせて制作していた『医薬品のがん原性試験における統計的側面』が何とか間に合って、当セミナーでお披露日・販売するために出張したのである。
本書は、谷本学校統計分科会の皆様の尽力により発刊できた書籍なので、挨拶を兼ねて行かねばならない、ということである。
セミナーの中味は、本当はとことん突っ込んで話を聞きたいところなのだがそうもいかず、専門知識不足でほとんどついていけずに過ぎた。休憩時には、『がん原性』の販売に力を入れたのである。場所は、日本オルガノンの講堂。おしゃれ。
17:30からは懇親会で、多くの方と歓談することができた。
谷本学校とはこのあと、『毒性質問箱第5号』の刊行だけでなく、『Casarett & Doull's Toxicology 6th ed.』1300ページの翻訳という大事業が待っている!詳細は間もなくご案内する。とにかくすごいエネルギー。
出版社は、その機能を生かして、自社出版物だけでなく多くの印刷物の制作をお手伝いしている。今回の論文集もそういう一冊である。
ネズミの遺伝学者として、日本の環境変異原研究の開拓者の一人として、1950年代から活躍された国立遺伝学研究所におられた土川清先生(1991年没)の遺志を継いだ奥様により、「公益信託土川記念哺乳動物研究助成基金」が設定され、以後7回、14名が受賞されたのを記念して標記のような論文集刊行の計画をお聞きしたのは、昨年のことであった。
以後、5人の編集委員の尽力で、原稿が集積され、全体像が見えてきたところでの編集委員会が小社会議室で行われたのが6月13日であった。
小生が中味に関与する訳ではないのだが、不思議なもので出版社が加わると、単なる冊子だったものが「本」に変身していくのである。
組版はどうするか、台割は、カバーのデザインは?口絵のレイアウトは?などと詰めていく過程で、原稿の集積が本になっていくのである。
という訳で、『土川清記念論文集』の制作に関わっている。土川先生には、遺伝研の教室でお目にかかったことがあるはずである。没後10年を経て、なお記憶され、その業績がしのばれる、というのは思えば素晴らしいことである。何かの研究会での発表の際のお姿を写した(口絵に使用される)先生のお写真は、満面の笑みをたたえて、やさしくこちらを見つめておられる。